頑張る人の物語

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第6回 『 1枚の写真

 こうした中、 1 月末に再度長倉の講演会があることを知った。今回も 50 人規模の講演会で大手町で開催されるイベントだった。

 「多くの人に長倉さんを知ってもらいたい」

 藤野はそう考え、 10 人程友人を誘っていった。あまりに楽しみだったのか、藤野達は開演時間よりも大分早い時間に会場についてしまった。 1 月である。外は寒い。会場付近で藤野達は待つことにした。

 人数が多かったこともあり、また若かった事もあり藤野達は目立った。丁度、ある女性が藤野に声をかけてきた。「ちょっと準備がごたごたしちゃって間に合いそうにないから、よかったら手伝ってくれない?」この講演会の企画主の黒岩さんだった。

 藤野は快く承諾した。

 やがて時間が来て、講演会が始まった。前回は多少涙ぐんでいた長倉であったが今回は落ち着いていた。アフガニスタンに関する様々なスライド写真を見せながら長倉は話を続けた。

1 枚の写真が藤野の目に飛び込んできた。時間にして 5 秒程。しかし、この写真が藤野に大きな衝撃を与えた。そして、この写真がアフガンプロジェクトを発足させた決定的な要因となった。

 その写真の中では少年達がサッカーボールを蹴っていた。夕日が沈む中、ハイリハナという地域で少年達の後ろには墓地が続いている。内乱で殉死したムジャヒディン(聖イスラム自由戦士)達の墓地だ。6人の少年達がボロボロになったサッカーボールを追っていた。一人の子供が口をあけて笑っていた。

 「あ、サッカーボール蹴ってる」

 藤野は思わず声をあげた。しかし、本当に藤野が言いたかったのは違う言葉だった。

 「あ、笑ってる」

 今までマスコミでアフガニスタンの映像で流れてきたものはアフガニスタンの荒廃ぶりを伝えるものであり、子供たちの泣いた顔であった。藤野は嬉しかった。サッカーができるようになったこと、子供たちが笑っていること。これは大きな衝撃でもあった。

 講演会が終わった。今回もまた帰ろうと思っていた。長倉洋海に話しかけるには自分はまだまだ何もしていない。そう藤野は感じていたのだ。

 出口付近で、会場設営を依頼してきた黒岩さんが話しかけてきた。

 「どうだった?講演会は」

 「すごく良かったです。特にあの子供たちがサッカーボールを蹴っている写真には感動しました。できるだけ多くの人に長倉さんの事を知ってもらいたいです。学生集めて講演会とか企画していきたいので、その時はよろしくお願いします」

 心が空っぽになる思いで言った。今まで憧れていた長倉洋海と実際に会話する機会を作れるかもしれないのだ。

 「是非こちらこそお願いね」

 といいつつ、黒岩さんは少し考えながら藤野の目をみた。

 「今日これから長倉さんと打ち上げいくけど、よかったら来る?」

考える必要は無かった。

 「是非!!」

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