頑張る人の物語

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第23回 『 “お前の夢は何だ?”

 また、帰国後 2 日前にローズベと車の中で運転手を除いて二人きりになる時があった。ローズベは本当によくしてくれた。性格はお茶目である。常に場を明るくしてくれる。しかし、本当によく働いた。朝は一番に起き、藤野達を起した。夜も一番遅くまで仕事をしてくれた。

現地で通訳にあたったのもローズベだった。色々と現地の人と意見が対立する事もあった。そうした言葉は全てローズベに浴びせられ、それを双方に伝えていくことになった。相当プレッシャーにもなったことだろう。

ローズベと藤野は喧嘩もしたし、一緒になって笑いもした。サッカーボールを小学校に届けにいく時はいつも一緒だった。藤野はいつも明るいローズベを心から信頼していた。

そんなローズベが真面目な顔をして藤野に問いかけた。

「リョータ、アフガニスタンの将来はどうなると思う?」

 突然の質問、そしてローズベの真剣なまなざしに驚いた。藤野は答えられなかった。

「じゃあ、お前の夢は何だ?」

この質問にも藤野は困った。日本ではあまりこういう会話はしない。ストレートに夢は何だと聞かれたのは初めてだった。また正面きって自問したこともなかった。 10 分間考えた。

「ごめん、答えられないや」

申し訳なさそうに答えつつ、藤野は問いかけた。

「じゃあ、ローズベは?」

 一瞬下を向き、ローズベは答えた。

“ Peace”

 今まで、夢は何かと聞かれると「大金持ちになりたい」とか「サッカー選手になりたい」という個人に関する夢を考えていた。しかし、ローズベは国の事を考えていた。また、藤野はアフガニスタンがロシアの占領後、すぐに内戦を始めたことを理由にこの国の人達は戦争好きなのではないかともどこか考えていた。

戦争が嫌なら止めればいい。対話をすればいいじゃないか。そう思っていた。しかし、これはあまりに軽率だった。

長倉も同様の体験をしたとのことだった。

ある日、戦車が通り過ぎると一人の子供が「あ、戦車だ」と声をあげた。日本ではチャンバラなどを子供たちが楽しそうにやっている。その感覚で、長倉は子供に聞いた。

「君は戦争が好きなの?」

子供は長倉を憐れむような顔をして言った。

「おじさん、戦争では人が死ぬんだよ?」

藤野も今、同じ思いをしていた。実際に戦争で一番苦しむのは現地の人達だ。家族を失い、住んでいた所を失う。彼らは戦争を望んでいない。しかし、だからといってどうすればいいのかなんて分からないのだ。

様々な考えが藤野の頭を駆け巡った。そして、ローズベを見た。彼はじっと藤野の顔を見つめていた。ローズベが言った peace という言葉は今でも藤野の頭を離れない。それは、多くのアフガニスタンの人達が夢として持ち続けてきたことなのだろう。

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