頑張る人の物語

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第17回 『 プロのレーサー、プロのメカニック、プロのチーム

 復帰後、中野はCARTで日本人史上最高位となる4位を獲得するなどの成績を残している。だが世界一を目指す中野は決してこの結果に満足する事はできなかった。しかし、そんな中野をさらに追い討ちをかけるように様々なアクシデントが襲っていた。

 レース中にタイヤが急に外れたり、ガソリンの蓋が閉まっておらずレース中にマシンが炎上して中野自身が火だるまになったりと生死に関わる事故が大事な時によく起きた。

 「特に3年目である2002年は大きなチャンスが幾度となくありながら、自分とは関係が無い部分での数多くの
  マシントラブルで、本当に欲しい結果が残すことができなかった。」

 中野は僕にこの頃の事をこのように語った。

 『自分とは関係が無い部分でのマシントラブル』。

 最初、中野にこの話を聞いた時に彼が珍しく言い訳をしているのかと思った。中野は決して言い訳をする人ではない。何か出来ない事があると、全てを自らの責任とし、その解決策を考えていく。こういう人だ。こうした中野でさえも他者のせいにしてしまうのかと最初は思っていた。

 しかし、僕の考えは間違っていた。中野はチームの人達を尊敬していた。モータースポーツはドライバーだけのスポーツではない。監督、メカニック、タイヤメーカーなど全ての人達が一緒になって勝利を掴んでいくものだ。ドライバーがプロなのであれば、メカニックもプロだ。同じプロであれば当然にして果たすべき役割がある。

  中野はチームを尊敬していたからこそ、チームにプロとしてのクオリティを求めていた。そして、タイヤが外れたりガソリンの蓋の閉め忘れたりなど初歩的な所でのミスをすることはプロのチームメンバーとしては許されないことだった。

 チームに対しても厳しくなる代わりにチームからも厳しくしてもらう。こうした環境だからこそ優勝へ近づくことができるのだと中野は考えていたのだろう。

 中野がドライバーとして才能があること、そして何よりも努力をしてその才能を最大限に発揮できるようにしていることは彼を知る関係者が皆理解していることだ。結果として、とてもいい成績を記録できた訳ではない。

  しかし、そこには中野が語るようにレースにトラブルはつきものとはいえ自分が関係しない、“ありえないミス”があったことも事実であり、そうしたことはあまり知られていない。

中野がプロのドライバーである以上、結果が求められるのは当然のことだ。そのことを誰よりも理解している中野は、様々なトラブルで満足のいく結果が出せなかった時も言い訳をすることはなかった。やりきれない思いをひとり自分の中に押し込め、どんな言葉にも耐え続けた。しかしそんな中野の姿勢が思わぬ展開を招いてしまうこともある。

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