頑張る人の物語

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第4回 『 徹との出会い

 そもそも、柴田と石川の出会いは偶然だった。柴田が大学に入ったとき、最初はある体育会系の部活に仮入部した。しかし、その部活の活動にあまり魅力を感じなかった柴田は4月の間にやめてしまう。

  だが、大学も5月になると、どこの部活もサークルも入れる所がなくなっていた。「大学に入って部活もサークルもやらないなんて・・・」と悲観にくれていたとき、友達が柴田に言った。

 「柴田さ、部活どこも入ってなかったよな?俺が一つサークルに入れといてやったよ」

 その友達が柴田に無断であるサークルの加入手続きをしてくれていたのだ。勝手な行為に感謝すべきか迷惑だと言うべきなのか複雑な心境のまま、何のサークルかもわからない状態でその友人に手をひかれてその教室に入った。

 教室に入るとすぐ、柴田の目に

 『歓迎 柴田彰』
  
  という黒板に大きく書かれた文字が入ってきた。そして、その横に手話サークルという文字が書かれていた。そういえば、柴田の入部を祝う中には車椅子の人もいる。そう思いながらも、今まで手話などとは縁がなかったので特別な興味はひかれなかった。もちろん、サークルにはあまり顔を出さなかった。

 2000年の夏、サッカー日本代表の試合が行われた。柴田はサッカーが好きだった。高校まではずっとサッカーをしていた。高校3年生のとき、地区予選で柴田がPKをはずしてチームは負けてしまう。結局これが引退試合となったのだが、そのときのくやしさが忘れられず、大学に入ってサッカー部に入ることはやめようと考えていた。しかし、サッカー熱はもちろん残っている。

 あるときサッカーの話を友達としていたら、その友達が言った。

 「そういえば、石川徹もサッカーの『日本代表』らしいよ」
  「へ~そうなんだ」

 と答えつつ、「石川徹って誰だったけ?」と考えていた。そういえば、いた。“同じ”手話サークルのメンバーで車椅子に乗っていたヤツがいた。話を聞いてみると、車椅子サッカーというものがあるらしく、その日本代表なのだそうだ。

 ある日、大学の授業が早く終わり少し時間ができた。いつも一緒に帰っている友達は今日はバイトだとかでいない。久しぶりにサークルにでも顔を出すかと思い、部室に向かう途中、柴田は石川に会った。

 「サッカー好きなんだって?」

 ほかに話すこともなく、柴田は石川に問いかけた。石川は嬉しそうな顔をした。その日、柴田と石川はサークルに行かず、二人でいろいろな話をした。石川はサッカーに詳しかった。日本の選手の名前はもちろん知っていたし、柴田が知らないような外国の選手の名前も知っていた。車椅子サッカーのことも教えてくれた。しばらくしてからではあったが、石川の病気のことも教えてくれた。
  
  石川は筋ジストロフィーという病気だそうだ。筋ジストロフィー。筋肉が収縮し、その機能を失っていく病気を総称して筋ジストロフィーという。代表的なのがデュシェンヌ型であり、石川もこの型だ。ジストロフィンというたんぱく質がないため膜が破れやすくなり、筋繊維が壊れていくと考えられている。命にも関わる病気だ。

 柴田は石川と長いことサッカーの話をした。それは、いつも友達と話をしているときとまったく同じような話題になり、同じような興奮があった。柴田は一人の友達として石川と接することができていた。

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