頑張る人の物語

> 柴田彰の一覧へ

第5回 『 車椅子乗ってるからって調子にのんな!

 石川と仲良くなったおかげで、柴田は手話サークルのほうにも参加しはじめた。石川と過ごす時間も徐々に増えてきた。柴田は普通に石川と接していた。しかし、石川と一緒にいる中でだんだん周りの声が気になるようになった。

 みんなで飲みに行ったときも
  
  「徹には飲ませないで」
とか
  「もう徹は帰った方がいい」
   とか石川のことをみんなが気遣うのだ。もちろん、体調が優れないのはわかっている。しかし、何か友達と石川の間に微妙な距離があるように柴田は感じていた。

 ある日、柴田と石川は喧嘩をした。些細なことだった。石川がはっきりと物を言わないことに柴田が腹を立てたのだ。

 「徹、お前はっきりしろよ!いくら車椅子乗ってるからって調子のんなよ。お前甘えすぎなんだよ!!」

 普段、友達と喧嘩する口調で柴田は石川を怒った。石川は悲しそうな顔をした。帰り道、電車の中で柴田は石川に携帯でメールを打った。「ごめん、さっきは怒りすぎたかな?」

 しばらくして、柴田の携帯にメールが届いた。石川からのメールだった。

 「今までこんなふうに怒ってくれた人いなかった。ありがとう」

 石川の周りには素敵な人たちがいた。みんなが石川のことを大切にし、愛していた。しかし、そんな周囲の人たちも石川を一人の障害を持つ人として見てしまっていたのだ。しかし、柴田はそんなふうに思ってもいなかった。柴田にとって、石川は一人の友達に過ぎなかった。柴田は言う。

 「はじめ、サッカーの話で入れましたからね。やっぱ同じ趣味があったことが大きかったんでしょうかね。」

 柴田と石川はそれからさらに仲良くなった。飲みにも行ったし、一緒に旅行にも行った。飲みの席でもまったく普通の友達として接した。一緒に旅行したときも車椅子にふざけてのって、ほかの宿泊客の部屋のドアにどんどんとぶつかったりして、たくさんの客が二人の部屋に怒りにきた。石川も柴田と同じように怒られた。このとき、石川は一人の人間として怒られていた。このような経験がさらに二人の信頼の輪を厚くした。

次へ>>

  • GRNKI式トップページ
  • プロフィール
  • GENKI式ブログ
  • 頑張る人の物語
  • 取材・講演依頼