頑張る人の物語

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第10回 『 これがACTのやりたいこと

 笑いが静まり返ったあと、柴田は少し真面目な顔で会場にいるほかの発表者に突然問いかけた。

 「障害者って聞いて何を感じますか?」

 会場がまたシーンとした。今度はみんな、真剣に考えている。しかし、誰も答えを言い出さなかった。柴田は石川との関係や今まで体験してきたことを面白おかしく伝えた。石川が全然普通の友達と変わらないことを。しかし、普通に接していても周りからはそうは思われないことを。

 柴田は続けた。

 「今日ここに来て、俺たちが欲しいのはお金じゃありません。今ここに来て皆さんに話を聞いてもらえただけで価値があるんです。徹とかが面白いヤツだってわかってくれだだけで価値があるんです。今日のこのこと、これが俺たちACTのやりたいことなんです」

 会場が拍手に包まれた。ACTの『心のバリアフリー』は日本一周をはじめた7月20日に始まったのではない。この日、ACTの活動はすでに行われていた。いや、ACTはその企画が始まった段階から『心のバリアフリー』を始めていたのだろう。柴田たちに会った人たちの多くが、障害者に対して持つ認識が変わっていったのだ。

 結局、優勝はGEILという政策プランコンテストを毎年開催している団体になった。今までの実績とそれを活かしての今後の活動の可能性に高い期待が感じられたからだ。しかし、審査にあたったリクナビ編集長冨塚氏の計らいで急遽特別賞が作られることになり、ACTには特別賞として1万円が寄付されることになった。日本一周をしていて、どうしてもお金に困ったときに使って欲しいという意味を込めての1万円だった。ACTにとっては優勝賞金の20万円よりも大きな金額になったかもしれない。

 終了後、柴田は僕に話しかけてきた。

 「小田さん、あれで良かったですか?」

 僕の期待は完全に裏切られた。もちろん、いいほうに。

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