頑張る人の物語

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第16回 『 診察室の前で

 「今夜がヤマですね」

 当直の先生が言った。柴田たちは頭の中が真っ白になった。恐れていた最悪のケースが発生したのだ。そのとき、ここの呼吸器科の塩田医師が駆けつけてきた。塩田医師は箱根にいる石川の主治医と電話で話をした。

 石川の主治医は主張した。切開して人口呼吸器をいれなくてはいけないと。しかし、仮に人口呼吸器をいれてしまうと、その後石川はベッド生活をしいられることになる。もちろん、日本一周なんてできなくなる。石川の健康が第一であるのは当然だ。しかし、柴田たちはほかに何かできないのか、そう考えていた。

 塩田医師は柴田たちから話を聞き、ACTのことを知った。その活動理念そして彼らの行動に共感を抱いた。医師としてはもちろん患者の体を救うことを第一義に考えるべきだ。しかし、同時に今目の前で苦しんでいる患者の意思を削ぐことはやりたくない。塩田は柴田に向かっていった。

 「僕に任せてくれ。人口呼吸器をしなくても、徹君が回復するように努力してみるよ」

 柴田は塩田医師を信じることにした。

 その後、塩田医師がどういう処置をしたかはわからない。しかし、奇跡的に石川の体調は回復した。ぐったりしていて舌をしまうことさえもできなくなっていた石川は、翌日には会話ができるぐらいにまで回復した。

  このときのことを石川、石川の家族、主治医は言う。石川は日本一周をしたいという夢があった。一緒に日本一周してくれる仲間がいた。だから回復したのでしょう、と。

 本当に医学的にはありえない回復だったそうだ。

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