頑張る人の物語

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第10回 『 自分自身への不満

 実はこのとき、船橋は自分自身に対しても不満を感じていた。それは、自分が『造られている』という意識から生じたものだった。

大学受験の時までもずっと、船橋は父親に疑問を抱き続けていた。確かに父親は自ら言っていることは守るし、言っていることは正しい。しかし、そんな父親に船橋は抵抗したかった。強く抵抗しようと思っていた。

だが、船橋が人と接する時、常に父親みたいな言動を取っている自分に気がついていた。

 「人にはもっと優しく接するべきだ」
  「もっとこう生きた方がいいんじゃないの?」

 父親に反抗しているくせに、無意識の内に父親のように正論を語ってしまっている自分がいることに気がついていた。船橋は自分が確立していないという事に焦りを感じていた。

 自分自身が確立していないことは大学の授業の時間においても気づかされた。船橋は大学で「人間学」という講義を受けていた。講義の課題で『善とは?』というテーマについて論文を書くことが課せられ、この課題で優良者が3人選ばれた。船橋の答案もその優良賞に選ばれた。

 船橋は、善が存在することの意義やその魅力について延々と述べた論文を書いた。先生からの評価は非常に高く、船橋自らも満足をしていた。しかし、次に紹介されたもう一つの優良者の論文は意外なものだった。

 「善なんていうものは存在しない」

 そういう書き出しの論文であり、船橋とは全く逆のことを書いていた。内容としては確かに練られており素晴らしいものだった。自分とは全く異なる価値観がそこにはあり、そのことに船橋は心の底から驚いた。

子供の頃から様々な価値観と触れてきた自分、しかしそうした自分もまだ少しの価値観としか触れてきていなかった。今までは自分の考えを主張すれば多くの人が共感をしてくれていた。しかし、今自分の耳に入ってきた意見は全く正反対の意見であり、価値観だった。

 周りの知人に対しても問題意識を覚えていたが、それ以上に船橋は自らに対する問題意識を感じていた。そしてそれは造られた自分という意識に大きな拍車をかけた。

船橋は悩んでいた。しかし、問題は分かってもそれをどう解決をしていけばよいのかが当時の船橋には分からなかった。そして、大学時代の船橋はバイトと部活をすることで考えることから自らを回避することができていた。

 そのような船橋がその答えを得るきっかけは、答えのヒントが生じたためではなく、反対にその問題意識がさらに深刻なものとなったことがきっかけだった。そのきっかけとは失恋だった。今まで付き合ってきた彼女に大学4年生の9月に船橋は振られた。

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