頑張る人の物語

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第15回 『 トレーディングゲームとの出会い

 そんなある日のことだった。船橋は一緒に世界1周をした余語という神父から連絡を貰った。

たまたま姉と知り合いであった余語は世界1周の過程で船橋に様々なことを教えてくれた。それは世界にちりばめられた知識であり、歴史にうずもれていた知識だった。世界1周後も定期的に連絡をとっていたが、ある日この余語から連絡が来た。

 「今度、留学生を集めて面白いゲームをやるから来ませんか?」

 余語は定期的に留学生を集めてイベントをやっていた。どうやら南北問題をゲームを通じて考えていくというものらしい。会社の仕事が忙しく、できれば週末はゆっくりしていたいと思いつつも、世界1周を共にした余語からの折角の誘いだったこともあり船橋はこのゲームに参加することにした。

 船橋が着くと既に暗い教室に20人位が集まっていた。韓国人、インド人、日本人。学生、社会人分け隔てなく集まっていた。

 余語がゲームのルールを説明し始めた。

 「みなさん、それぞれの国別にチームを組んでください。そして、それぞれの国に用意してある資源や道具を使って、製品を作ってください。ゲーム中は何をやっても構いません。ゲーム終了時点で製品を売って、一番売上げが多いチームが勝ちです」

 これがトレーディングゲームと船橋との出会いだった。ゲームが終了し、余語が解説をしている間中、船橋は震えが止まらなかった。

 このゲームでは予め各国に与えられた条件は違った。資源、道具そして人員も違う。ルールは最低限のルール以外は特に無い。自分の国だけ資源を独占しようとすると、他国から嫌われてその後交渉ができなくなる・・・。

全てが現実の世界で起きていることだった。特に予め与えられている条件が違うということは現実の南北問題を象徴していた。麻雀でもポーカーでも将棋でも人生ゲームでも、大抵のゲームではプレイヤーは同じ条件でスタートする。しかし、このゲームでは違った。だが、工夫の仕様によっては一番条件が悪い国でも一位になることができた。

 船橋はこのゲームにショックを受けた。南北問題に関心はあったが、ここまで全体的な構造を把握はしていなかった。そして、何よりもこうした真面目な問題についてこのような疑似体験を通じて伝えていくという方法があることに驚きを感じた。

 「こういう形だ!まさしくこれだ!!」
 
  船橋は興奮していた。南北問題についてもそう、世の中に様々な価値観があることを伝えていくことに関してもそう、楽しみながら伝えていくことについてもそう。このゲームには世の中で起きていることが全て凝縮されていた。

そして、このゲームを通じて自分の強み・弱みが分かってきた。発想力が無いことが分かったり、行動力が無いことが分かったり。また他人とのコミュニケーションの必要性などについても理解ができた。自分を知り、他人を知り、社会を知る。そうしたエッセンスが全て凝縮されていたゲームだった。

 船橋は考えてみた。自分がやりたいことは何だったかと、そして、そのために何をすればよいのかということを。

 世の中の全員を幸せにしたい。幸せというのは裕福とか自己実現が出来ている状態ではなく、船橋にとっての幸せとは苦しんだり悲しんだりする人がいない状態だ。多くの人はこの世界に様々な価値観、様々な考え方があることを知らない。

そして、自分が弱者と思う人に対してレッテルを貼ってしまい、レッテルを貼られた事に気づいた人は自らが不幸と思ってしまう。しかし、貧しくても不幸せとは限らない。障害を持っていても不幸せとは限らない。それは、船橋が子供の頃に見て感じてきたことだった。

 大事なことは『知ること』。

この世の中に自分とは違う価値観があり、自分とは違う視点があることを。そして、その違いを個性として認めてあげることが大事だと感じていた。

そして、船橋は感じるようになっていた。『知る』ためには『知りたい』と思わなければならない。伝えたいのであれば知りたいと思わせる体験をさせる必要があった。楽しいから知りたくなると思わせる必要があった。

 それが何なのか。今までの船橋には分からなかった。問題と解の方向性は見えていても具体的に何をすればいいのかが船橋には分かっていなかった。しかし、その答えを今自分は経験してしまった。

 トレーディングゲーム。ゲームを通じての疑似体験。

これが船橋が出会った答えだった。実際にゲームを通じて自分の事が分かった。そして、何を改善していけばいいのかも分かった。他人との協業により、それぞれの得意分野を活かしていくことでより高い目標を到達できることも分かった。他人との違いを個性として受け止められていた。そして、社会全体の構造が分かった。

自分と他人、そして社会。この3要素がこのゲームには詰められており、かつ、それを楽しみながら学ぶことができた

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